大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)5403号 決定 1957年12月19日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人白石信明の上告趣意第一点は、憲法三八条三項違反をいうが、その実質は証拠なくして有罪事実を認定したという単なる訴訟法違反の主張であって、適法な上告理由に当らない。

同第二点は、憲法三六条違反をいうが、その実質は量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当らない(なお、原判決は、所論のように刑法三八条三項にいわゆる法の不知を判示したものとは到底考えられない)。

同第三点は、単なる法令違反の主張であって適法な上告理由と認めがたい。

弁護人小泉英一の上告趣意第一点は、憲法三一条違反をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張であって適法な上告理由に当らない。

同第二点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第三点は、量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当らない(なお、記録を調べても、所論の点に関する原判示は相当であって当裁判所においても是認することができる。本件においては商法上の匿名組合関係でなく、民法上の組合関係を認めることが相当である。また、被告人が本件建物の所有名義を移転したのは、本件の共同事業から生じた債務の整理のため、これをしたわけではなく、共同事業を始める前に生じた被告人個人の債務に対する弁済として、これを行ったものであることは、記録上十分認めることができる)。

同第四点は、判例違反をいうが、所論引用の判例は本件に適切でなく、論旨は前提を欠き採ることをえない。なほ論旨は、結局被告人が本件建物を自己の物と信じていたという事実誤認の主張に帰し、適法な上告理由に当らない。

よって刑訴四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例